コラム - お役立ち情報

2022.10.06

「国語力」とは?

そもそもの定義とは?

開発部に属する筆者ですが、今回は技術的な話題から離れて「国語力」について語ってみようと思います。

文部科学省の審議会 答申の中に国語力とは

1考える力,感じる力,想像する力,表す力から成る,言語を中心とした情報を処理・操作する領域
2考える力や,表す力などを支え,その基盤となる「国語の知識」や「教養・価値観・感性等」の領域

という2領域から表される、という記述があります。
この1の領域が情報システムを扱う上で極めて重要で、筆者はプログラム書く能力よりも必要なんじゃないかと思うことも多々あります。

言語を中心とした情報を処理・操作する領域とは?

1の領域を答申の詳しい説明から見てみると、

【考える力】とは,分析力,論理構築力などを含む,論理的思考力である。
分析力は,言語情報に含まれる「事実」や「根拠の明確でない推測」などを正確に見極め,さらに,内在している論理や構造などを的確にとらえていける能力である。
また,自分や相手の置かれている状況を的確にとらえる能力でもあり,知覚(五感)を通して入ってくる非言語情報を言語化する能力でもある。
論理構築力は,相手や場面に応じた分かりやすく筋道の通った発言や文章を組み立てていける能力である。

システム屋にとって要件を解釈することが仕事の始まりなので、【考える力】が無ければその後の工程を遂行する能力を発揮する前に試合終了です。
また、要件の解釈は一方通行ではなくこちらが解釈した(と思っている)ことを相手に伝え、間違いが無いか、過不足無いかの確認キャッチボールをするのが普通です。
出来上がってから齟齬が発覚すると大ダメージなので、ここで論理構築力が効いてきます。
アナリストが受け止めた内容をチームメンバに広める時も論理構築力によって伝達内容が造られます。
 

【感じる力】とは,相手の気持ちや文学作品の内容・表現,自然や人間に関する事実などを感じ取ったり,感動したりできる情緒力である。
また,美的感性,もののあわれ,名誉や恥といった社会的・文化的な価値にかかわる感性・情緒を自らのものとして受け止め,理解できるのも,この情緒力による。
さらに,言葉の使い方に対し,微妙な意味の違いや美醜などを感じ取る,いわゆる「言語感覚」もここに含まれる。

システムに於いては例えば列挙された要求事項の重要度、優先順というようなファクタが絶対的尺度で語られることが殆どないので、所謂「行間を読む」とか、若しくは業態、業種、ビジネスエリア、そして顧客の担当者や上席者のこだわりといったものから類推して決めていきます。
ユーザインターフェースを設計する際にはラベル、説明テキスト、メッセージのようなシステムからの「語りかけ」が利用者にどのように「響く」かを想像できる感性が必要です。これには相手の文化圏での語彙知識や慣習、常識も求められます。取扱説明書、マニュアル、ヘルプのようなアウトプットを作成するのにも【感じる力】は大いに発揮されます。
 

【想像する力】とは,経験していない事柄や現実には存在していない事柄などをこうではないかと推し量り,頭の中でそのイメージを自由に思い描くことのできる力である。
また,相手の表情や態度から,言葉に表れていない言外の思いを察することができるのも,この能力である。
 
※なお,物事を考え,感じ,想像することにより,言語を中心とする情報の内容を正確に理解できることから言えば,上記の「考える力」「感じる力」「想像する力」をまとめて,【理解する力】と位置付けることもできる。

数々の「モノづくり」の中で情報システムは【想像する力】を強く要求される分野です。何故なら、
・制作物が物理的な形のないシステムだから
・同じものを2度と作らないから(同じものはコピーしてしまえば済むので)
という特性があるので、顧客の問題解決を空想の中で実現し、顧客が新しいプロセスを利用している姿を描けるだけのイメージ力が他のモノづくりよりも強く求められます。
この力も国語力の一端として発揮されるのです。何故なら頭の中で想像するという行為は、無意識に内にその人が知っている言語を使って組み立てられているので、国語力が乏しいと想像の中の表現も乏しくなってしまうのです。
芸術的なイメージの想像は異なるかもしれませんがシステムをイメージするというのは言語表現と切り離せないのです。
 

【表す力】とは,考え,感じ,想像したことを表すために必要な表現力であり,分析力や論理構築力を用いて組み立てた自分の考えや思いなどを具体的な発言や文章として,相手や場面に配慮しつつ展開していける能力である。

技術職にありがちな「博識だけど説明がヘタ」な人は【表す力】が不足しています。脳内では充分に理解していても、それを記憶の中の適切な単語に結びつけて表現としてアウトプットを作り出すには国語力が重要です。【感じる力】や【想像する力】を組み合わせて、相手の文化圏や知識量に合わせた表現を組み立てるのは高度な国語力を必要とします。

人間は頭の中で思考する時、自分の普段話す言語で思考しています。言語によって論理に向くとか向かないといった差がある、という議論が為されており、あくまで一般論として英語は論理思考に向いていて日本語は論理思考しづらい、という研究もあるそうです。
日本語を話す日本人でも論理思考に優れた人はいくらでも挙げられますが、一般人の一般論として有利不利というのはあるようです。





まとめ

大人になってから国語力を伸ばす方法はあるのでしょうか。小中学生向けに「国語力を伸ばす方法」を検索すると「読書する」「音読する」を挙げているサイトが多いようです。大人向けは特別違ったメソッドが必要なわけではないでしょうから同じように読書を重ねるのが有効だと思われます。
ただ、大人になると「飛ばし読み」が上手になってしまって意識して読まないと「精読」ができなくなっているかもしれません。この点、音読すると飛ばし読みできないので効果が高いのですが、大人が遠慮せず音読できる場所は限られていそうです。
せめて「丁寧に読む」を意識して本をたくさん読みましょう。