2022.12.16
会社の業務がどんどんとIT技術に依存するようになってきています。「DX」という標語の下にIT化は加速の一途を遂げています。
仕事中だけでなく日常生活でもIT依存のものは増えていて、「コンピュータは分からん!」で済ませていては大きな不利益を被るようになってきました。
特にコロナ禍が、対人接触や紙の授受を避けることができるという理由からIT化を強く後押しした感があります。
ITリテラシー、という言葉があります。リテラシーとは元々読み書きの能力ですが転じてその分野の知識、能力を活用する力を指します。
企業で社員の採用を計画するとき、配属予定の業務に照らして「こんな能力を持っている人を募集します!」と要項を示しますが、ITリテラシーとされる知識・技能は簡単に資格として表現しづらく、
・EXCEL、パワポが使えること
のように募集側も応募側も欲しい・持っている知識・技能の表現に苦労しているのではないでしょうか。
資格という面では情報処理技術者試験が国家資格として長年運用されていますが、これはITプロフェッショナル向けの資格が中心で、一般向けには「ITパスポート」という資格試験があり、受験もネット上で容易に受けられるのでもっと活用されて欲しい資格です。
独立行政法人 情報処理推進機構IPAのサイトではITパスポートの説明、申込みだけでなく過去問も見ることができるので、どういう知識を要求されるのか知ることができます。
小学生からタブレット持たされてITツールに触れながら育つ世代はITリテラシーを十分に備えた頼もしい存在になるでしょうか。
ある面ではそのとおりだと思います。がしかし、ITツールを「あたりまえ」な身近な存在として育つということは、反射的に体が動いてツールが指先の延長線として使えてしまうようになってしまいます。
羨ましいようなスキルに聞こえますが、反射的に指が動くようになってしまうと熟慮の介入無しに操作されるということを意味し、セキュリティやモラルといった「きちんと後先考えて踏み止まる」ことを要求されるスキルが疎かになりやすいと言えます。
ITリテラシーとは大別すると
に分けられます。
1.の技術面は学校や研修で教えやすいのに対して2.の運用面は教えにくく且つ軽視されがちです。
1.は知らなかったり、教えを守らなければそもそも仕事になりません。
2.は知らない/守らないとしてもとりあえずは使えてしまうので後回しになりやすいのです。
しかし本来目的ではないことへの影響、ことからの影響を防ぎ、自分自身と目的としている仕事を守るためのものである、といえます。
自転車に例えてみましょう。
自転車の操作方法、ハンドルさばきやブレーキの掛け方とかは子供の頃に教えてもらいながら練習し乗れるようになった、という方が多いのではないでしょうか。
これは1.に該当します。知らなければ自転車に乗るという行為が成立しません。
乗れるようになってからは交通ルールを守ること、昨今ニュースにもなっている車道を走るとか、信号無視しないとか、スマホ見ながら乗るなとかの運用ルール、知ってはいても守らない人が少なくありません。
これは2.に相当し、ITリテラシーにおいても問題化しやすい側面です。
2.のカテゴリの要素は、
という「悪魔の囁き」が「事が起こったら大変なことになる」を忘れさせてしまいます。
さて、ITリテラシーを別の切り口で分類すると次の3つに分けられます。
企業が求人募集を出す際の要件、に立ち戻ってみましょう。
事務職、営業職といったオフィスワーカーを募集するならまず C) が必須でしょう。EXCELが使える、というのもコレです。
ある程度自律的行動を求めるマーケティングのような職種では A) も重要でしょう。
技術職では A) B) C) 全てが必要です。
B) が前述の 2. と密接に関係していますが、一般的に情報教育では C) に重点が置かれ B) は軽視されてきました。小学生にタブレット使わせるような政策が出てきたときに安全性が懸念され、B) もきちんと教育しましょう、ということになっていますが、それでも C) に偏重したカリキュラムです。B) は教科書で教えるには向かない、とても教えるのが難しい分野です。
ITでも自転車の例えでも同じですがマナーやルールは「教える内容」は少なく、「乗る技能」のほうがボリュームがあるように見えます。
しかしマナー、ルールはそれを並べて「はい、覚えてね」では守られないものです。
自動車運転免許の更新時に交通事故の悲惨なビデオを見せられるように、個人情報漏洩してしまった企業がどれほどの損害を被ったか等の実例を嫌というほど見せて、2. の重要性を説く必要があるのかもしれません。
それでも一定数の「自分には関係ないな」「自分は大丈夫」という認識の人がいるのが実情です。
近年サイバーセキュリティの重要度が増していることもあり、情報システム部門に安全対策を丸投げでは企業として対応に不足が生じてきているため、全社で B) の重要度が刻々と増してきています。
ITリテラシーを備えた人材を採用できればそれに越したことはありませんが、IT部門以外では本業をこなせる技量を持っていることが第一条件ですからITリテラシーを兼ね備えている人材というのは希少かもしれません。
ですから自社内で既存人材にITリテラシーを育成することも検討する必要があるでしょう。
そして交通安全教室や公衆衛生と同じようなレベルで情報セキュリティについての最新事情を例えば毎年のように継続的に全社員にアップデートし続けることが、新規採用する社員だけでなく既存の社員も含めて情報リテラシーを維持するために必要になってきているのです。