コラム - お役立ち情報

2020.12.23

システム化を成功させるコツ ~どの程度までシステム化するか?~

昨今、DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉をよく耳にするようになりました。
長年にわたり業務システムの受諾開発を行ってきた弊社でも、さまざまなお客様の業務のシステム化を支援してきました。
今回は弊社がこれまで蓄積したノウハウの中から、業務のシステム化に取り組むときに是非注意して頂きたいポイントのひとつを紹介します。

課題はたくさんあるけれど・・・

とある業務用資材メーカーの話です。
その会社では毎日、全国の顧客から大量の注文が電話とFAXで舞い込んでいました。
電話オペレーターと入力担当に分かれ、電話オペレーターは注文を用紙に記入し、入力担当に回します。
入力担当者は手書きの電話注文書とFAX注文書をPCに入力。入力が終わったデータは、最後にベテランの担当者がチェックを行っていました。

商売が右肩上がりで拡大するなか、このまま人力に頼っていてはいつか破綻してしまうと、受発注システムの導入に踏み切りました。

システムの要件を決める過程で、実に様々な課題が上がりました。
「同じ商品でも、A店に出す1箱とB店に出す1箱では入数が違う。」
「販売価格も、相手やその時の条件によって当然違う。中には注文後に交渉が入る顧客もある」

多種多様な顧客企業に合わせてビジネスを作り上げてきたこの会社では、受注業務と一口に言っても、その中には数えきれないほどのイレギュラーが発生していました。

議論を重ねた結果、この受発注システムではあえて在庫管理や販売管理と直結しない、受発注にのみ特化したシステムを目指すことになりました。

顧客はインターネット上で発注を行い、締め時間になると蓄積された発注データが一括でCSV出力されるだけのシステムです。
定型注文の登録機能や発注承認機能など、顧客にとって便利な機能は盛り込まれましたが、受注側にとってはデータ入力が代替されたのみで、それ以外の関連業務へはノータッチです。
さらには、電話とFAXでの注文もこれまで通り対応します。

せっかくシステム化するならば、電話とFAXでの受注をやめ、受注から在庫引き当て、出荷指示、請求データ作成まで一貫して処理したほうがよさそうなものです。
上記の例は、一見するとシステム化の恩恵にとても乏しい印象です。
しかし、このシステム化は結果的に成功でした。

業務のシステム化を成功させるために

上記の例が成功といえる理由は費用対効果を十分に発揮できたからです。

■イレギュラーを無理に抱え込まない
どんな業務でも「慣例化した例外」があるものです。でも、あくまでも例外は例外です。
すべてをシステムに収めようとするのではなく「主要な業務をカバーできれば良し」と考えるべきです。
イレギュラーな部分を無理にシステムに折り込もうとすると、逆に主要な業務の効率を下げてしまうことがありますし、開発コストも膨れ上がってしまい費用対効果を下げてしまいます。

システム化を成功させるためには無理にイレギュラーな業務をカバーしようとするのではなく、最もシステムが効果を発揮できる主要な業務に絞り込むことが大切です。

■業務量との兼ね合い
上記の例では、システム化のターゲットを定型的な受注処理に絞りました。
これは件数にして一日1,000件を下らず、受注業務の7割を占めています。
一つの業務で、さらに定型的な部分だけのカバレッジではありますが、これだけのボリュームを効率化できたので、この受発注システムは投資した費用に対して十分な効果を発揮してくれました。

もちろん、定型的でない残りの3割をすべてシステムでカバーすることも不可能ではありません。
しかし、その3割の中身はバラバラで統一性がありません。それらを一括でシステム化するためにはいくつもの機能や枠組みを追加する必要があり、開発コストがかさんでしまいます。

システムは繰り返して使う回数が多いほど、費用対効果が高まります。
業務をよく分析し、十分なボリュームがある業務や、繰り返しの頻度が高い作業に絞ってシステム化に取り組むことをおすすめします。

まとめ

業務のシステム化の際には、その業務が定型的なものかイレギュラーなものかを改めて確認してください。
1つの業務をシステム化するときに必ずしもその業務を丸ごとやればいいというものではありません。
業務をできる限り細分化していき、システム化によって効果を発揮できるものとできないものとを見極めることが、成功のための大事なポイントです。